子どもの健康と砂糖代替甘味料の安全性:公的機関の指針
WHO、米国小児科学会(AAP)、JECFA、厚生労働省の指針から、子どもにおける砂糖代替甘味料の安全性と推奨を整理します。
子どもの健康と砂糖代替甘味料の安全性:公的機関の指針
子どもと甘味料:公的指針の整理
子どもの食生活における甘味料の問題は、世界保健機関(WHO)、米国小児科学会(AAP)、各国の保健機関が継続的に発信しています。
主な指針:
- WHO 2015年「Sugars intake guideline」:遊離糖類を総エネルギーの10%未満、できれば5%未満に
- WHO 2023年「Use of non-sugar sweeteners guideline」:非糖質甘味料の長期使用を体重管理目的では推奨しない
- 米国 AAP の継続的な提言:子どもの砂糖摂取制限と甘味料への慎重な姿勢
- JECFA の安全性評価:個別甘味料のADI設定
WHO 2015:子どもの砂糖摂取制限
WHO の Sugars intake guideline(2015)は、子どもの肥満・虫歯予防を主要な根拠としています:
子ども特有の課題
- 虫歯:乳歯・永久歯の形成期に大きな影響
- 嗜好形成:幼少期の甘味体験が生涯の食習慣に影響
- 肥満:小児肥満が成人後の肥満につながる
WHO の推奨:
- 6か月以降の離乳食では、遊離糖類の添加を最小限に
- 12か月以降も砂糖含有飲料を制限
- 学校給食での糖類管理
WHO 2023:非糖質甘味料への警鐘
2023年5月、WHO は新たなガイドライン「Use of non-sugar sweeteners: WHO guideline」を発表しました:
体重管理目的または非感染性疾患リスクの低下を目的とした非糖質甘味料(NSS)の使用について、成人および小児に対する長期的な摂取を推奨しない。
対象となる甘味料
- アスパルテーム、サッカリン、スクラロース、アセスルファムカリウム
- ステビア配糖体、羅漢果抽出物
- これらを含む製品
根拠
- ヒト介入試験のメタアナリシスで、長期的な体重管理効果が限定的
- 一部の研究で2型糖尿病、心血管疾患リスクとの関連を示唆
- 子どもへの長期影響データは特に限定的
注意点
- 「危険」と断定したわけではない
- 糖尿病患者など、医療目的の使用は対象外
- ADI 内の摂取は引き続き安全とされる
- ただし、「ダイエット飲料を子どもに長期常用させる」は推奨されない
米国小児科学会(AAP)の指針
**米国小児科学会(American Academy of Pediatrics、AAP)**は、子どもの非糖質甘味料使用について、論文・声明を継続的に発表しています。
主な要点:
1. 砂糖摂取の制限優先
- 子どもの加糖飲料摂取量を減らすことが第一
- 100% 果汁も子どもには制限的に
- 水と無糖の飲み物を中心に
2. 非糖質甘味料の小児使用への慎重姿勢
- 長期的な安全性データの不足
- 味覚形成への影響の懸念
- 「健康的な甘さ」の認識への影響
3. ラベル表示の重要性
- 子どもに与える食品の原材料表示の確認
- 「無糖」「ダイエット」表示の意味を理解する
JECFA の安全性評価と子どもへの適用
JECFA(FAO/WHO 食品添加物専門家委員会)は、甘味料の ADI(Acceptable Daily Intake)を体重ベースで設定しています:
ADI = mg/kg体重/日
これは子どもにも同じ基準で適用されます。例:
- 体重 20kg の子どもの場合
- アスパルテームの ADI = 40 mg/kg × 20kg = 800 mg/日
ただし、子どもは:
- 体重あたりの摂取量が成人より高くなりやすい
- 代謝経路が成人と異なる可能性
- 長期使用の累積影響
を考慮する必要があり、「ADI 内であっても可能な限り避ける」というアプローチが推奨されます。
日本の状況:厚生労働省・消費者庁
日本では:
- 厚生労働省「食事摂取基準」で乳幼児・小児の栄養基準を設定
- 消費者庁「特別用途食品」(乳幼児食、病者用食品等)の規格管理
- 日本小児科学会による継続的な情報発信
母子手帳・離乳食ガイド等にも、砂糖摂取の制限が明記されています。
子どもに適した甘味料の選び方
各カテゴリの子どもへの適性:
| 甘味料 | 子どもへの推奨度 | 理由 |
|---|---|---|
| 母乳・乳糖 | ◎ | 子どもの本来の栄養源 |
| 果物の自然糖 | ○ | 果物全体として摂取 |
| 米麹甘味料 | ○ | 一般食品、伝統的に子どもにも |
| はちみつ | ✕(1歳未満) / ○(1歳以上) | 乳児ボツリヌス症の懸念 |
| 砂糖 | △ | WHO推奨量内で |
| メープルシロップ | △ | WHO推奨量内で |
| 高甘味度甘味料(アスパルテーム等) | △ | WHO 2023長期使用非推奨 |
| 糖アルコール | △ | 過剰で緩下作用 |
米麹甘味料が子どもに適している理由
米麹甘味料は子どもの食生活で以下の利点があります:
① 伝統的安全性
甘酒として古来から子どもに与えられてきた長い実績(夏の風物詩「甘酒売り」)。
② アルコールゼロ
米麹甘酒・米麹甘味料は通常アルコールを含まないため、子どもにも安全。
③ 自然な甘さ
砂糖の30〜50%の甘味度で、過剰な甘さを避けやすい。
④ 栄養補給
ビタミンB群、必須アミノ酸、ミネラルの自然な補給源。
⑤ 機能性成分
レジスタントプロテイン、オリゴ糖等が腸内環境に寄与する可能性。
⑥ 食品添加物指定なし
食品表示で「米、米麹」と明確に表示され、保護者にとって理解しやすい。
実用的な使い方
子どもの食生活への取り入れ方:
飲料として
- 米麹甘酒を朝食代わりに(1日コップ1/2杯程度)
- 牛乳・豆乳で薄めて
- 季節を問わず(夏は冷やして、冬は温めて)
調理に
- 砂糖の一部を米麹甘味料に置き換え
- 焼き菓子、煮物、ドレッシング等
注意点
- 米麹甘味料も糖質は含むので過剰摂取は避ける
- 1歳以下の乳児は離乳食ガイドラインに従う
- アレルギーがある場合は医師に相談
食事教育(食育)の文脈
子どもの甘味料選択は、長期的な食習慣形成に直結します。食育(食を通じた教育)の観点では:
- 「自然な甘さ」を経験させる
- 加糖飲料の常用を避ける
- 食品表示を一緒に見る
- 季節の食材・伝統食品を取り入れる
米麹甘味料・甘酒は、日本の食文化の継承と健康教育を兼ねた教材としても価値があります。
まとめ
WHO 2015、WHO 2023、AAP、JECFA、厚生労働省の指針を総合すると、子どもの甘味料選択の優先順位は次のようになります:
- 砂糖摂取自体を減らす(WHO 2015)
- 非糖質甘味料の長期常用は避ける(WHO 2023)
- 自然由来の甘味料を選ぶ(米麹甘味料・はちみつ等)
- 食事全体のバランスを重視(食育)
米麹甘味料は、1500年の伝統的安全性と現代の栄養科学の両面から、子どもの食生活に取り入れやすい選択肢の一つです。
河原 あい / Ai Kawahara
編集長 / 株式会社オリゼ CTO
株式会社オリゼ CTO。博士課程では発酵食品中の微生物の研究に従事し、博士(環境共生学)を取得。管理栄養士としての栄養学の知見と、微生物学・発酵科学の研究背景を併せ持つ。オリゼでは米麹・発酵関連の研究開発全般を担当。