米麹・発酵食品の科学と文化を、日本から世界へ届ける専門メディア
発酵ノートNo. 016サイエンス

発酵と栄養価の変化:ビタミン・アミノ酸・機能性成分はこう変わる

発酵によって食品の栄養成分がどう変化するかを、ビタミン・アミノ酸・機能性成分の3観点から整理します。

Aspergillus oryzaeKoji SweetenerSaccharification 55–60°CResistant Protein
河原 あい||3

この記事を共有

① ビタミンの増加:微生物が作るビタミン

発酵食品で最も顕著な栄養変化の一つが、ビタミンB群とビタミンKの増加です。これらは微生物が代謝活動の中で合成するもので、原料には少なくても発酵食品には豊富に含まれます。

ビタミン関与する発酵役割
ビタミンB1(チアミン)麹発酵、酵母発酵エネルギー代謝
ビタミンB2(リボフラビン)麹発酵皮膚・粘膜の健康
ビタミンB6麹発酵アミノ酸代謝
ビタミンB12一部の細菌発酵造血、神経機能
葉酸麹発酵、納豆発酵DNA合成、胎児発育
ビタミンK2(メナキノン)納豆発酵骨形成

特に納豆のビタミンK2は突出して高く、麹発酵食品もB群を全般的に多く含みます。

② タンパク質→アミノ酸・ペプチドへの分解

発酵中、原料のタンパク質は微生物のプロテアーゼによって分解され、遊離アミノ酸ペプチドになります。これにより:

  • 消化吸収が容易に:体内での消化負担が軽減
  • うま味の生成:グルタミン酸など旨味成分が大幅増
  • 生理活性ペプチドの生成:血圧降下、抗酸化、免疫調節など

例:味噌・醤油では、大豆タンパクが約8〜15%まで遊離アミノ酸として遊離。米麹発酵でも10種類以上のアミノ酸が豊富に生成されます。

③ 機能性成分の生成

発酵によって新たに生まれる機能性成分は、近年の発酵食品研究の中心テーマです。

GABA(γ-アミノ酪酸)

リラックス・抗ストレス効果が研究されているアミノ酸。乳酸発酵や麹発酵中に増えることが知られ、玄米由来の発酵食品で特に多く生成されます。

レジスタントプロテイン

米由来のタンパク質画分で、消化酵素に抵抗して大腸まで届き、食物繊維様の働きをします。米麹発酵糖分(株式会社日本の研究機関による継続研究)で詳細が解明されつつあります。

グルコシルセラミド

米糠・米麹に含まれるスフィンゴ脂質類で、皮膚バリア機能・腸内環境への寄与が研究されています。

抗酸化ペプチド

味噌・醤油・甘酒の褐色色素(メラノイジン)と関連ペプチドは、抗酸化作用が報告されています。

発酵で「失われる」成分

栄養価の観点では、発酵中に減る成分もあります:

  • デンプン:糖化によりブドウ糖・オリゴ糖へ(カロリーは大きくは変わらない)
  • アミノ酸の一部:微生物の代謝で消費される
  • ビタミンC:熱や酸化で減少しやすい

ただし、これらの変化は「栄養価が下がる」というより、「形を変えて使いやすくなる」と表現するのが正確です。

米麹甘味料の栄養特性

米麹甘味料は、発酵の3つの変化をすべて利用しています:

  • マルトース・グルコース・オリゴ糖による自然な甘味(プレバイオティクス含む)
  • 遊離アミノ酸による旨味とコク(砂糖にはない奥行き)
  • レジスタントプロテイン・GABA・ペプチド類による機能性

砂糖が「カロリーだけ」を提供するのに対し、米麹甘味料は「甘味+機能性成分」を同時に提供できる点が、現代の食品設計で注目される理由です。

まとめ

発酵は食品の栄養価を「単に上げる/下げる」ものではなく、構成成分を再構築して人にとってより使いやすい形に変える代謝プロセスです。米麹発酵はこの再構築が特に多様で、現代の機能性食品の設計に多くのヒントを与えています。

この記事を共有

Editor-in-Chief / 編集長

編集長 / 株式会社オリゼ CTO

株式会社オリゼ CTO。博士課程では発酵食品中の微生物の研究に従事し、博士(環境共生学)を取得。管理栄養士としての栄養学の知見と、微生物学・発酵科学の研究背景を併せ持つ。オリゼでは米麹・発酵関連の研究開発全般を担当。

参考文献・関連リンク